移住相談会でよく聞かれるのは、観光スポットよりも、「車がなくても暮らせますか?」「災害は少ないですか?」といった、生活に直結する質問です。
本記事では、神奈川県から倉敷市へ移住した筆者の実体験をもとに、移住相談でよく寄せられる疑問に答えます。ただし、地域や暮らし方によって状況は異なるため、倉敷市が公表する情報も交えて紹介します。
制度やイベントの情報は、2026年8月時点のものです。
車がなくても生活できる?
結論からいうと、倉敷駅など主要駅の周辺であれば、車がなくても生活はできると思います。
筆者自身、移住してから約2年間は車を持たず、自転車と公共交通機関を中心に暮らしていました。移住前から「駅前なら車がなくても暮らせそうだな~」と考えており、ほぼペーパードライバーの状態で倉敷へ。毎日の通勤がない働き方だったことも、車なし生活が成り立った大きな理由です。
倉敷駅周辺にはスーパーが複数あり、普段の買い物には困りませんでした。平坦な道が多いため自転車でも移動しやすく、スーパーをはしごすることも。病院は、徒歩圏内から探し、体調がつらい時にはタクシーを利用していました。
一方、駅から離れた店や、仕事で企業を訪れる際には不便さを感じることもありました。友人や仕事関係の人に車で送ってもらう場面もあり、そのたびに申し訳なさを感じていたのも正直なところです。
倉敷市内には、JR、水島臨海鉄道や井原鉄道、路線バスなどの公共交通機関があります。ただし、出発地と目的地によっては乗り換えが必要になったり、公共交通だけでは移動しにくい地域があったりするので、「車があればなぁ……」と思ったことも何度かありました。住まいを決める際は、通勤先やよく利用する場所までの経路と時刻表を確認しましょう。
ただ、市内の主要駅(JR倉敷駅・JR新倉敷駅・JR児島駅など)には、駅周辺にカーシェアリングがあるため、必要な時だけそのようなサービスを利用するのも良いと思います。
筆者が車を持ってからは、産直市場で地元の野菜を探したり、県北や近県へ出かけたりと、行動範囲が大きく広がりました。「香川県へうどんを食べるためだけに出かける」。そんな楽しみ方ができるようになったのも、車を持ってからです。
振り返ると、車がなくても暮らせたのは、駅の近くに住み、毎日の通勤がない生活だったからだと思います。そして近年の厳しい暑さを考えると、真夏の自転車移動を前提にするのは、個人的にあまりおすすめしたくありません。(移住者相談会でも「夏の自転車がきつくて車買いました」と話すくらい、夏の自転車はしんどいです……)
車なしでも生活できるエリアはありますが、車があることでより倉敷暮らしの楽しみがぐんっと広がります。
災害が少ないって本当?
「晴れの国」と呼ばれる岡山県に、災害が少ない印象を持っている人もいるかもしれません。
恥ずかしながら、筆者は災害事情を深く調べず、「住みやすそう!」という直感に背中を押されて倉敷へ移住しました。岡山県が「災害が少ない地域」として語られていることも、暮らし始めてから知ったほどです。
たしかに、神奈川県で暮らしていた頃と比べると、倉敷で地震を体感したり緊急地震速報を聞いたりする機会が大きく減ったと感じています。ただし、これはあくまで筆者個人の経験であり、倉敷で地震が起こらないという意味ではありません。
倉敷市は、南海トラフ巨大地震を想定した津波浸水、液状化危険度などを公表しています。地域によって想定される災害も異なるため、住まい探しの際は市の公式情報をチェックしてみてください。
倉敷の防災を語る上で忘れてはいけないのは、平成30年7月豪雨です。高梁川の支流である小田川の堤防が決壊し、広範囲が浸水しました。75名の命が失われ、その後は地域住民や支援者、活動団体などによって復旧・復興への歩みが重ねられてきた歴史があります。
移住相談で災害について聞かれたとき、筆者が一番伝えたいのは、日本全国のどこを探しても、災害リスクがまったくない場所はないということです。
倉敷市では災害別のハザードマップを公開しています。「倉敷だから安全」と考えるのではなく、検討している物件の周辺にどのような危険があるのかを確認し、災害に備えていきましょう。
移住者同士がつながれるコミュニティはある?
「倉敷に移住者交流会はありますか?」「倉敷に知り合いがいないんですけど、どうすれば友達ができますか?」
移住相談会でよく聞かれるこちらの質問。正直に答えると、筆者は倉敷市内で、「移住者なら誰でもいつでも参加できる常設の大きなコミュニティ」を知りません。個人間で、移住者という共通点で盛り上がり、仲良くなっている……ということは多いかもしれません。
移住者向けの交流イベントが開催されることはたまにありますが、頻繁に大々的な募集が行われている印象はなく、ネットやSNSで検索をかけてみても、すぐには見つからないことが多いです。
筆者の実体験をお話すると、地域おこし協力隊の活動や地域メディアでの取材を通して、少しずつ知り合いが増えていきました。イベント出店を手伝ったり、行きつけの居酒屋で常連同士がつながったりしたこともあります。「移住者の集まりに入った」というより、仕事や好きなことを入口に、地域の人間関係が広がっていった感覚です。
そもそも出身地を知らないまま付き合っている人も多く、地元出身者と移住者を分けて考える場面は、筆者の周囲ではそれほどありませんでした。
そんなこんなで、移住者相談会で「移住者コミュニティはありますか?」と聞かれたときは、「私も知らないので欲しいです」という、なんともお役に立てない本音を話してしまいます。
それでも、職場や趣味の集まり、地域のイベント、行きつけのお店など、人と知り合う入口はたくさんあります。自分が県外から来たことや、友達をつくりたいことを周囲に話していると、別の移住者を紹介してもらえることもあります。
既存の「移住者コミュニティ」を探すだけでなく、日常的に通える場所から少しずつ居場所をつくる。倉敷での友達探しは、その方が現実的かもしれません。
倉敷では、仕事を見つけられる?
移住とは切っても切り離せない「仕事」の話題。希望する職種や条件にもよりますが、働く場所には困らない印象です。
倉敷市は、全国有数の規模を持つ水島臨海工業地帯を擁する工業都市です。製造業のほか、建築や医療・福祉、ITや運送、デザイン会社など、幅広い業界が揃っています。また、「倉敷を盛り上げたい」とまちづくりに励む企業も多いです。
地域おこし協力隊として企業を取材するなかで、「若い人材を採用したい」「人手不足に悩んでいる」といった声を何度も聞いたので、相性の良い企業との出会いがあればお互いにとってとても喜ばしいことだと思います。
移住相談会では、「移住してから仕事を探してもよいですか?」という質問をされることもあります。可能であれば、先に勤務先を決めておく方が、通勤手段を基準に住む場所を選びやすくなります。収入の見通しがある方が、賃貸契約も進めやすいでしょう。
一方で、現在の勤務先でテレワークを続けながら移住する人もいます。倉敷に住むことと、倉敷市内の企業に勤めることは、必ずしもセットではありません。
仕事探しに不安がある場合は、市が設ける「くらしき移住就労サポートデスク」を利用できます。倉敷市の労働市場に詳しいキャリアコンサルタントへ無料で相談でき、オンライン面談にも対応しています。
求人サイトや公的支援を利用する。今の仕事を続ける。倉敷での働き方は一つではありません。まずは、希望する仕事と暮らし方を整理してみるのも良いかもしれません。
地域の人間関係は濃い?
筆者も移住前は、「すれ違う人とは毎回あいさつするのかな」「よそ者として見られないかな」と少し構えていました。
しかし、実際に倉敷駅周辺で暮らしてみると、人との距離感は川崎にいた頃とほとんど変わりませんでした。道ですれ違う人と、必ずあいさつを交わすわけではありません。引っ越し後の近所へのあいさつも、女性の一人暮らしだったため、防犯面を考えて控えました。
約3年間暮らすなかで、県外出身であることを理由に冷たくされた経験もありません。むしろ「神奈川から倉敷によく来てくれたね」と歓迎してもらったり、地元の人から「冷たくされていない?」と心配されたりすることの方が多くありました。ありがたいことに、一度も嫌な出来事には遭わずに、今も楽しく倉敷の暮らしを楽しんでいます。
倉敷は、転勤や進学、結婚などをきっかけに県外から来た人も多いので、地元出身者か移住者かを気にする雰囲気は、少なくとも筆者の周囲ではなかったです。
ただし、人との距離感はエリアによって異なります。中心市街地から離れたエリアを歩いていると、地元の人から「こんにちは」と声をかけてもらうことがあります。あいさつからそのまま立ち話をすることもしばしば。地元の人との温かい交流が好きな人にとっては、たまらないかもしれないですね。
エリアによって、人付き合いの濃さも変わるので、実際にその街を歩いた方が良いと思います。
ちなみに、筆者は自治会や地域行事への参加を強制されたことはありません。家賃に町内会費が含まれているので支払っていますが、活動への参加を求められたことはありませんでした。ただし、自治会の活動や住民の関わり方も、地域や物件によって異なります。心配な場合は、契約前に不動産会社や大家さんへ確認しておくと安心です。
人間関係の距離感は、倉敷市内でも地域差があるため、自分に合う距離感かどうかは住む前に街を歩いて確かめてみることをおすすめします。
おわりに
移住後の暮らし方は、人によってさまざまです。先輩移住者に同じ質問をしても、住む場所や仕事、家族構成によって答えは変わります。
車なしで暮らせるかどうかは、住む場所や働き方によって変わります。人間関係の距離感も、地域によって異なります。災害についても、「岡山だから安全」と一括りにはできません。
だからこそ、移住前には物件や制度を調べるだけでなく、実際に街を歩き、通勤経路やスーパーなども確認してみることをおすすめします。
本記事で紹介した内容は、倉敷で暮らす一人の移住者が感じたことです。それでも、観光情報だけでは分からない、実際の暮らしを知るための参考になればうれしいです!







